■□■□ 第6章 仕事の資源 ■□■□
■「情報の共有化」
 私達が仕事をする時、誰もが使う共通の資源(材料)がある。社長であろうと、新入社員であろうとこの資源の要素は同じなはずだ。ただ、違うのは人によって自分の自由になる、コントロールできる資源の質と量に多少の違いがあるだけ。また、資源の使い方の違いによっても、差は生じてくるのだが・・・。私達が仕事をする時、誰もが使う共通の資源(材料)がある。社長であろうと、新入社員であろうとこの資源の要素は同じなはずだ。ただ、違うのは人によって自分の自由になる、コントロールできる資源の質と量に多少の違いがあるだけ。また、資源の使い方の違いによっても、差は生じてくるのだが・・・。「情報の共通化」の情報もこの共通の資源の1つである。この情報については、「情報化社会」の到来の名のもとに、ビジネス書などでは、盛んに次のようなことが書かれている。
 ビジネス書いわく、「これまでの経営とは、人と、物と、お金の経営だったが、今や情報が新たな経営資源に加わった」と言う事らしい。しかし、こうした考え方は、しつこい様だが、何度も言わせてくれ、「ナンセンス!!!」と。それのうえ、この考え方が経営・仕事の進め方の本質を見失う原因となっていると思う。そのいい例が、最近良く聞く「情報武装戦略」の企業における実態だ。情報という経営資源を有効に活用するため、「社員一人一台のパソコン導入だ!!」と元気良く買い揃えたものの、コンセントすら差し込まれず、「オキコン(置きコン)」化している事例もある位だ。
 実は、今も昔も、情報が重要な経営資源な事に変わりはない。なぜなら、「仕事は自分と他人の共同作業」だからだ。これもいつの時代にあっても変わりはない。共同作業である以上、仕事をする仲間との情報交換は絶対に欠かせないことである。遥か昔、私達の先祖が狩猟生活を送っていたときでさえ「マンモスが来るゾ!!」という見張りの知らせは、狩猟という共同作業を行な上で重要な情報として、メンバーに伝達されていたはずだ。そう考えると、やはり情報は新たに加わった経営資源ではないのだ。情報はお金よりもずっと以前からある重要な共同作業のための資源なのである。新たに資源として加わったかのように思えるのは、私達がマンモスを狩猟していた頃と比較すると、格段に情報量が増え、コントロールできないほどになっているせいだ。だから、「情報武装化」をしたいのであれば、重要なことは、情報処理のためのパソコン等の導入の前に、私達がビックバンのように拡大し続ける情報をいかにコントロールするか、又、道具として何を使うのかを考えるかが大事なのだ。そのために、今一度、誰もが仕事を行なうにあたって活用する情報を含めた資源を見直してみよう。簡単に言うと、資源は全部で 5つある。「人」「物」「お金」「情報」「時間」の5つだ。「お金」がこの世に誕生して以来、この5つは、いつの時代でも重要な仕事の資源だ。私達の仕事は、この5つの資源の上に成り立っていて、又この5つの資源は相互に関連しあっている。つまり、この5つのバランスの上に私達の仕事は成り立っているのだ。だから、本当の意味での「情報武装化」は、他の4つの資源を含めて考えなければ効果的な成果を上げることはできないのである。まず、自分なり、自分のチームなり、会社なりを、この5つの視点で観た時に、バランスがどうなっているかを考えてみてはいかがだろう。仕事が上手くいかない、成果がなかなかでない時は、この 5つの資源のバランスが悪いか、または、悪いことを知らずに仕事を進めている時だといえる。突出してしまった、情報と時間とのアンバランスを「人」のパワーアップによりバランスを取る事を考えよう!それが唯一の方法だと私は確信している。なぜって、仕事をするのは情報ではなく、私達、「人」なのだから。

■「5つの経営資源」
 5つの経営資源ってなんだろ?はい、答えは「○」「○」「お○」「情○」「○間」だ。(さぁ、○の中を埋めてみよう!分からない人は、前の節を読んでみよう!!)
 じゃ、本題へ。5つの資源のバランスをあれこれと考えている内に1つの結論(仮説)に到達したのだ。それは、5つの資源が相互に関連しあいながらスパイラル(螺旋状)に拡大・発展していくモデルだ。
 それは、「人」→「物」→「お金」→「情報」→「時間」→「人」→「物」と順次、連鎖しながら拡大・発展しているように思える。拡大・発展だから進化と呼んでもいいかもしれない。つまり、「人の進化」→「物の進化」→「情報の進化」→「時間の進化」そして、また「人の進化」へとつながって、社会の発展や生産性の向上が生じているのではないかと思う。そして、現代をこのサイクルに当てはめると、「情報の進化」「時間の進化」の時代にあたっているといえそうだ(ま、私の勝手な解釈だが)。結構何度も、 5つの資源のバランスが重要であることを述べているが、各資源が進化しながら連鎖することを考えると、とっても重要なことに気がつく。それは、5つの資源のバランスを取ることができるのは唯一「人」であるということと、現代が「情報の進化」「時間の進化」の時代であるということだ。現代は、バランスを取るための操縦士である「人」と「情報」・「時間」の2つの資源とが最もアンバランスになっている時代なのだ。携帯端末やノートパソコン、携帯電話、パソコン通信がなかった時代(実は、ほんの数年から十年くらい前の話だ)の「人」のスタイルのままで、現代を行くには、バランスが取れない状況になっている。「情報の進化」に「人の進化」(ビジネスで言えば「仕事の進め方の進化」)が追いついていないのだ。ま、過去の歴史を参考にすれば、ある程度の時間が経てば、自動的に「人が進化」し、バランスが良くなっていると思う。(ま、ほおっておいても、その内バランスが良くなるはずって事だ。)でも、今を、今の自分が幸せになる為ためには、意図的に「人」を進化させ、良いバランスを早期につくりあげることが必要だ。つまり、「(人=仕事)の進め方」を進化させる方向が分かれば、仕事はもっと楽しく・やりやすくなるし、長続きしている不況だって、一瞬で吹き飛ぶはずだ!だから、皆で進化する為に、仕事を科学して、仕事の進め方の方向性をはっきりさせよう。

■「己を知る」
 5つの資源をバランス良く活用する。更には、「人」と「情報」「時間」の資源のアンバランスな時代にあって、「人」の問題を解決する。もっと具体的にいえば仕事の取り組み方、進め方を改善する事が大変重要だ。その為には、まず、「己を知る」事が大事である。自分の、仕事のすすめ方のいい点、悪い点、また傾向などの現状を知るということだ。人は誰しもそうだが、自分を分析しようとすると、自分に都合のいい方向に分析しがちだ。そこで、公平に己を知るべく、ワークシートなるものを作ってみたので、皆さん、自分の傾向と対策を知って、今後に役立てよう!このワークシートは、様々なマネジメントの考え方、スキルより導かれたものである。ではではさっそく、以下のワークシートを実施してみよう!!(ワークシート図)
 さて、結果はどうなったかな?このワークシートは、見ての通り全 25問あるが、各問とも、「1」は資源の上手な使い方の方向で、「5」は下手な使い方を表している。だから、「4」「5」は「3」以下になるように意識的に仕事をするだけで、自動的に皆さんの仕事の成果は上がるはずだ。
 また、平均点が「3」以上の資源があればもう一度、仕事の進め方を考える必要がある。例えば「人」の項目が3点以上で、他の項目が3点以下にもかかわらず、仕事の成果が上がっていない場合は、「人の使い方」なり「自分のスキル」なりに重大問題があるを表しているのだ。 このワークシートは、自分だけでなく、チームや組織の問題も見ることができるので、10名のチームであれば、10名でこのワークシートを行い、チームの平均点を出して、先程と同様のチェックをしていただければ良い訳だ。さぁ、まずは、「己を知る」ことができただろうか!

■「資源バランス」
 さぁて、 5つの資源のバランスを取るための「人」の役割の重要性は十分認識いただけたかな?まだ自信のない方は、拙著「セルフマネジメント・スキルBook」「ザウルスで仕事革命」を一読なさることをお勧めしたいと思う(たまには営業してみなくてはね)。トム・ピータースの「経営破壊」(TBSブリタニカ刊)で表現されている「クレージィ名社員」とか、マッキンゼーや、ボスマンの著作などで表現されている「とんがった社員」なども、これからの時代における「人」の重要性を語っている本だ。興味があるなら、読んでみるのもいいと思う。さて、5つの資源のバランスを個人で取り組もうとするならば、答えをセルフマネジメントに求めることができるが、チーム、組織ではどうしたら良いのか。結論から言えば、チーム、組織での5つの資源のバランスの取り方が「情報の共有化」ということになる。だから、効果的なチームワーク、グループワーク、またはグループウエアは、「各自のセルフマネジメント」と「チーム、組織の情報の共有化」の2つの要素から成り立っているといえる。よって、「情報の共有化」は「セルフマネジメント」があって、はじめて成り立つものということができるのだ。そうはいっても、基本はセルフマネジメントだと思う。5つの資源をバランス良く効果的に各自が活用するためのスキルがセルフマネジメントだし、その個人が集まって、チームを作る時、別の表現をすれば、セルフマネジメントをベースに情報の共有化がなされているとも言えるのだ。

■「人の視点」
 不況は戦後最長記録を更新し続けている。そんな中で、各企業では生き残りをかけた様々な対策が実施されているとおもう(読者の皆さんの会社も色々策を練っている事だろう)。また書店に行けば、コンサルティング機関や経営の専門家による「生き残り」のための出版物も目立つ。それらに共通するものは「人」の視点だ。例えば、三菱総研は「人間主義」を、マッキンゼーは「変革の核は個々の社員」を、船井総研は「人間性」を、という視点だ。しかし、この「人」の視点でのマネジメントは、(しつこい様だが)今に始まったことではないのだ。つい数年前のバブル好況のときも確かにこの視点はあったのだ。「能力開発室」とか「人材開発室」などの部門が乱立したのも、「人」の視点のマネジメントを考えたときに生まれた解決策である。じゃあ、一体、「人」の視点のマネジメントの本質は何なのだろうか?好況期にも不況期にも取り上げられるからには、ビジネスにおける本源的なものを持っているのは事実なはずなのだが、残念ながら、多くの出版物も、経営者も、それを明確に説明していない、説明できていないのが事実だ。ところで、“A”Timeは、一人一人の時間の使い方・仕事の進め方である、タイムマネジメント、セルフマネジメントの分野を専門に、トレーニングコースや組織的に取り組むためのコンサルティングを長年行なってきた。いわば「人」の視点のマネジメントのプロだ。“A“Timeの視点イコール「人」の視点と言っても過言ではない。それではここで、“A“Timeの捉えている「人」の視点のマネジメントの本質を簡単に紹介しようと思う。
 1. 仕事には必ず「人」が介在する。
 2. そも「人」は、「自分」と「他人(相手)」に分類できる。
 3. 仕事は自分を主体とし、相手・他人(客体)と行なう共同作業である。
 4. 同時に、相手の立場から見れば、自分は客体となる。
 5. 共同作業を行なうにあたり、一人一人の個人は、主体と客体の同面を同時に持っている。
 6. 共同作業(実践項目)は、自分と相手・他人との関係の上に成り立つ。
 7. 共同作業を上手に達成するには、主体と客体のバランスが重要である。
 以上7点が、仕事の定義であり、それにより導かれる「人」の視点だ。つまり時代背景とか状況によって左右されることのない、本源的・本質的なものなのだ。そして、“A“Timeがトレーニングコースやコンサルティングでお伝えしているのは、7番目の主体と客体のバランスの取り方に他ならない。しかし、残念ながら、多くの出版物やコンサルティング機関、そして企業内で取り組まれている「人」の視点のマネジメントは、“A“Timeで定義するところの「共同作業」に焦点があてられているようである。「共同作業」は、自分と他人の関係の上にはじめて成り立ちので、この関係(主体と客体のバランスの取り方)を無視した施策は、実効性の低いものになるのは当然だ。企業がとる様々な施策を実効性の高い物にするためにも、まず一人一人の社員が主体と客体のバランスの取り方を理解し、実行することが極めて需要なポイントになると思う。
 

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