■□■□ 第4章 原理原則 ■□■□
原理原則とは・・・根本となる仕組み、基本的な規則や法則の事だ。又、辞書で調べてみたところ、(【原理】=事象やそれについての認識を成り立たせる、根本となるしくみ。主として存在や認識に使う【原則】=主として人間の活動に関係する)だそうだ。トリビアのパクリみたいだが、おもわず「へぇー」と思ってしまった。辞書を引いてみると、普段良く使っている言葉でも、結構「本当はそういう意味だったのか〜」と思う事があって楽しい。とまぁ、話は多少それたが、本題に入ろう!
 
■「主観」と「客観」
 原理・原則を紹介する前に、考え方の基本をご紹介しておこうと思う。その理由は、HP閲覧の方々より、「どうして、いつも二つのセットなの?」という質問が多数あったことによるのだが。弊社のノウハウ、考え方の根幹をなしているのは、西洋風にいえば「二律背反=(アンチノミー)」。東洋風にいえば「陰陽」だ。そういうわけで、いつも二つのセットになっている。例えば、後にも出てくるが、「自分一人の仕事と他人と共同の仕事」、「パフォーマンスとリソーセス」という具合に2つで1つのセットで紹介させていただいている。これは、一つの事象を捉えるのに相対する二つの要因で捉えるというやり方だ。例えば電気という事象は「+極」と「−極」で捉えることができ、磁力は「S極」と「N極」で捉える事が出来る。そして大事なことは、片方だけでは成り立たないという「両極併存」の発想だ。「二律背反」で事象の構成要因を捉え、それが「両極併存」するしくみを考えるのが、仕事の進め方の原理・原則というわけだ。さて、初回のお題は「主観と客観」だ。お題が哲学的なので、哲学的な掘り下げを一つやってみたりしよう。インドのヴェーダ哲学では「認識」の三要素として「リシ、デヴァダ、チャンダス」の三つを上げられる(この時点で頭が痛くなってきた君!頑張って続きを読んでみよう!!)。これは、認識するという行為には、「認識されるもの」「認識する人」「認識の方法」の三つがあって、三つのどれかが変化すれば「認識」そのものも変わるという真理だ。ここまではヴェーダ哲学、ここからは弊社の考え方だが、三つの要素のうちの「認識する人」にだけ焦点をあててみる。そうすると「認識されるもの」が特定され「認識の方法」も決まれば、「認識する人」の気持ち、感じ方(主観)で、認識自体が変わるということになる。認識する人とは、ビジネスの現場では、一人一人の個人だ。不思議な事に、認識も変われば行動も変わる。その意味でも、一人一人の気持ち、感じ方(主観)は、ビジネスにおいて大きな位置を占めると思うのだ。しかし、残念ながら、現状のビジネスコミュニケーションでは、主観がおろそかにされ、客観重視というのが実際だ。生産性向上がなかなか実現しないのも、このあたりに深い理由があるからだと思っている。コミュニケーションを円滑にする為には、自分が基準の主観的要素(主張)と他人が基準の客観的要素(数量)のバランスを巧くとることが大事なのだ。

■「両極併存」
 「両極併存」。これは、別に政治の言葉では無く、物事の捉え方の言葉として、取り上げた。唐突だが、地球は南極と北極の両極から成り立っている。電気は+極と−極から成り立ち、磁石はS極とN極から成り立っている。つまり、両極を知って初めて全体が分かるということなのだ。もっと別の話しをすると、両極のセットが変化すると、物事の捉え方も変わってくるということだ。物事を捉える時、両極の軸を明確にしておくと、曖昧、混沌としているものも、かなりはっきり捉えることができる。この原理・原則も両極併存で組み立てられている。やる気とやり方、予定と突発、パフォーマンスとリソーセスなど、二対の両極のセットで、マネジメントを捉えようというのが、弊社のの基本的な考えだ。

■「自分一人の仕事」と「他人と共同の仕事」
 「自分一人の仕事」と「他人と共同の仕事」。これは、私達ビジネスを行なう全ての人に共通する仕事の原理だ。いろいろな仕事を日々やっているが、それらの仕事は、このいずれかに分類することができる。つまり、私達のやっている仕事は「自分一人でやる仕事」と「他人と共同でやる仕事」の二つから成立っているということである。「自分一人の仕事」というのはPC入力や書類作成・整理などの主にデスクワークで、「他人と共同の仕事」は、会議や商談、打合せ、電話などだ。この二つの仕事の原理から、いくつかの原則を導きだすことができる。二つの仕事への投下時間の割合は、当方の調査の結果、概ね4:6で「他人と共同の仕事」のほうが多いという結果になる。つまり、業務改善は「他人と共同の仕事」から着手するのが王道ということになるのだ。ようは、「他人と共同の仕事」がスムーズに進むと仕事全体の能率が上がる事になる。それに気づいているのかいないのか、最近、書店では会議関係の本が良く売れている。私としては 、納得しつつも「おいおい、今更気が付いたのかよ。遅いだろ・・・」と心で叫んでいる今日この頃だ。また、一方で「自分一人の仕事」への投下時間が30%を切ると、ストレスの増大や、業務の遅延につながるという調査結果がある。これは、確実に「自分一人の仕事」の時間も確保することが、大切なことだと言う事を示唆している。原理・原則に基づき、ビジネスコミュニケーションの改善と「自分の時間」確保に留意してお仕事を進めて行こう!もっと成果がでるはずである。

■「パフォーマンス」と「リソーセス」
 仕事には、必ず目的がある。例えば、コピーをとるという仕事も、目的はお客様に配布するためとか、チーム会議で使うためとかの目的があるわけだ。どんな仕事にも目的があって、その目的は幾重もの階層構造になっている。コピーをとるのは、お客様に配布するためというのがとりあえずの目的であったとしても、その作業の究極の目的は、売上を得るために行きつく。もう一つのチーム会議で使うための、究極の目的は、チーム力を高めるため、または個々のメンバーの力量を向上させるためというところに行きつくわけだ。
 つまり、全ての仕事の目的は、売上に関わることと組織の維持や強化に関わることの二つに収約されると考えることができる。では、前者をパフォーマンス、後者をリソーセスと呼ぶことにしよう。この二つのバランスは、組織発展には極めて重要な要素だ。例えば、ベンチャー企業が急激に成長し、急激に失速するのは、パフォーマンスが過重になり、リソーセスが手薄になって組織崩壊にいたる例が多く、老舗の大会社の成績が落ちるのは、それとはまるっきり逆で、リソーセス過剰となるからである。このパフォーマンスとリソーセスへの投下時間を個人、チーム、会社でウォッチすることは、バランスシートを確認するのと同じか、それ以上に重要な経営指標といえる。
 ※5【豆知識】 パフォーマンスマネジメント ・ リソーセスマネジメント

■「事前にわかる仕事」と「突発の仕事」
 仕事には、「事前にわかる仕事」と「突発的に生じる仕事」とがある。皆さんも、事前にわかる仕事については、計画をたてたり、準備をしたりと、生産性を上げるための工夫をしている事だろう。しかし、そうした計画や準備を台なしにするのが、突然目の前に割り込んでくる、突発の仕事なのだ。つまり、事前にわかる仕事で成果を挙げるには、突発の仕事にどう対処し、ダメージをいかに軽減させるかが、重要なことなのである。その対処の仕方は優先順位と投下時間で決まる。ところで皆さんは、突発の仕事を減らす努力をしていますか?おそらく、「突発の仕事なんて、他人が持ち込んでくる仕事なんだから、自分が何か工夫して減らせるものじゃない」と、諦めているのではないだろうか。ところが、その手法はあるのだ。突発の仕事のほとんどは、他人がもたらすものだが、その他人には、社内にいる他人と、社外の他人との、2つの種類があると思う。まず、社内の人間が持ち込む突発の仕事は、社内ルールを作ることで、かなり軽減ができる。例えば、上司が「おい、ちょっと」と部下を突然呼んで、打ち合わせを始めたりしない、事前に時間を取り決めておくとか、会議を開く前には事前準備ができるように十分な時間的余裕を置くといったことを、ルール化するのだ。社外から持ち込まれる突発の仕事は、こちらが先手を打つことで軽減できる。例えば、一緒に仕事を進めている相手など、連絡がありそうな相手には、先方からの連絡を待たずに、こちらから電話をする習慣を身に付ければ、それは事前にわかる仕事になり、その分、突発の仕事は減ることになるはずだ(言われてみれば、そうだな!と思った方が結構いるはず・・・)。しかも、その連絡を朝一番にやると決めておけば、連絡の結果、やらなくてはいけない仕事ができても、その日の仕事のスケジュールに組み込むことができ、やはり事前にわかる仕事にすることができるのである。素晴らしい!!このことに限らず、他の状況の処理も、方法がないと諦めないで色々試したり、考えたりしてみると、結構無理だと思っていた事が、簡単なしくみで解けたりもするから是非、色々考えてみて欲しいとも思う。

■「ルーティン業務」と「プロジェクト業務」
 仕事の進め方を分類するとたったの二種類しかない。一つは、毎日、毎週、毎月継続的に行なうルーティン業務。もう一つは、期間限定で行なうプロジェクト業務。仕事には、様々な内容があるが、進め方で振り分けると実はこの二種類しかないのだ。ルーティン業務の特徴は、どれ位で処理できるかの投下時間の予測はつけられるが、具体的にやる内容は、その場になってはじめてわかるという傾向がある。一方、プロジェクト型の業務は、それとは逆で、何をやらねばならないかの具体的行動内容は、事前にわかるが、それにどれ位時間がかかるかは、やってみないとわからないという傾向がある。また、ルーティン業務は、もともとはプロジェクト業務だったが、何度も繰り返すうちに、ルーティン業務に変化したと見ることができる。一般的に、ルーティン業務への投下時間が圧倒的に多い場合は、仕事が硬直状態にある可能性がある。また、プロジェクト業務への投下時間が圧倒的に多い場合は、仕事の変化が激しく、コミュニケーション、人間関係に支障が生じている可能性が見えてくる。また、パフォーマンスとリソーセスとをかけ合わせて、仕事の全体像をプロットすると、仕事の進め方の現状把握が容易にできる。仕事に何か問題があったら、解決の方法として次のことがいえるのだ。ルーティン業務に問題があるのであれば、その仕事を一時プロジェクト型(期間限定、行動明記)で取り組むこと。逆にプロジェクト業務に問題がある場合は、その仕事をいかにルーティン業務にするかの方法を考え、実施するかという事だ。この作業だけでも、個人の仕事だけでなく、チームの仕事も容易に改善することができると思っている。

■「やる気とやり方」
 仕事を進める上でスキル(技術)は大切だが、それ以上に大事なのが「やる気」である。「やる気」がないといくら立派なスキルがあっても、活かすことができないことだろう。さて、この「やる気」もビジネス現場ではよく耳にする言葉だ。特に昨今の不況のなか、潜在的なうつ傾向の人は、30%を越すというデータがある(考えてみて!友達10人の内、3人はうつだという事だ・・・もはや、人事ではない)。ま、かなり多くの人が「やる気」がなくて困っているということなのだろう。「もっとやる気を出せ!」とか「やる気あるのか!」の罵声は、ビジネス現場では、恒常的に発せられているフレーズだが、そう発している人たちに是非おたずねしよう。「どうしたらやる気がでるんですか?」と。そんな質問をしたら、「そんな事いうようだからやる気を出せなんて言われるんだ!」とか「とにかくやる気を見せろよ!」なんて返事が返ってきそうだ(それじゃ、答えになってないだろう!と逆切れしてみるのも面白い気がする)。つまり、多くの人は「やる気」のしくみを知らないで、使っているという事なのだ。これでは、やる気はあるのかもしれないが、「無責任」過ぎだ。こんな無責任が大手を振って、闊歩できるのも、今のビジネス界の特徴の一つではあるのだが・・・。さて、「やる気」を考えるときに、陰陽説、または両極並存という考え方が役に立ち、「やる気」の対極を「無気力」とするのでは、解決策は見つからないが、対極を「やり方」とすると、な・・なんとぉ?!解決策が見えて来るのだ。つまり、「やる気」と「やり方」はコインの裏表の関係、二つで一つの関係だと思っている。だから、「やる気」がないと、「やり方」が分からないとは、表裏一体だと思っている。「やる気」がないように見えるのは、実は「やり方」が分からないからかもしれないということだ。ほら、段段と、解決策が具体化してきたように感じにないかい?じゃ、この「やる気」、「やり方」と情報の関係を考えてみよう。情報には、戦略情報と戦術情報があって、それぞれの情報が「やる気」と「やり方」に影響を与えていると考えることができる。この考えから、「やる気」がない場合の原因として、二つの可能性が見えてくる。一つは、トップダウンの戦略情報が不適切で「やる気」を削いでいる場合。これは、その情報の発信者である上席者に問題があるということになる。ここのポイントは、情報の公平化という考え方だ。これは「同一情報を同時に全員に!」ということである。皆さんの会社は、これを実現できるしくみがありますか?もし、なければ、「やる気」のない社員がいても当然だ。すぐあらためて、公平化に取組んで欲しいと思う。もう一つは、戦術情報が不十分で「やり方」が分からない場合である。これは、いわゆる情報の共有化が実現されていない環境ということになる。
※6【豆知識】情報

■「個人」と「組織」
 個人と組織の問題は、政治、経済、経営、社会学など、あらゆる人文科学の主要テーマともいえることだ。この大きなテーマについて、タイムマネジメント(特に、ホワイトカラーの生産性向上)の視点から話したいと思う。まず、最初に結論から。個人と組織は敵対する関係ではなく、組織は個人の力を十分に引き出し、発展させるための便宜的な仕組みだと私は考えている。 だから、力の出せない社員がいた場合、多くは力の出せない個人の問題点にフォーカスされるが、私は、力の出せない環境や仕組みが組織にあるのではないかという点をフォーカスする。しかし、現実的なところとしては、力の出せない社員がいた場合の一般的な原因は社員自身の力の無さと組織の環境、仕組みの問題が同時に引き起こしたことによるのだ。ま、簡単にいえば、両方悪いということだ。1998年に東洋経済から出した「仕事を科学する」のサブタイトルを「社員も変わるとき、社長も変わるとき」としたのも上記のような個人と組織に対する認識があったからに他ならない。チームにしろ、会社にしろ、国にしろ、様々なサークルにしろ、あらゆる組織の存在目的で共通するのは、その組織に参加することによって、メンバーである個人が、いかに成長できるかの一点だけといっても良いと思う。ここ最近、会社を辞める人があとを絶たない理由も、「自分は成長できないんだ!」と感じる人が多いからだと思う。最近の社会では、中々、成長できる環境が整っていないせいもあるんだろうが、「俺、こんなでいいのか?」とか「自分自身を見つめなおしたい!」とかいう声をよく耳にする。夢を持てない職場・・・・その理由だけで十分組織は病んでいると言えると思う。または、組織・社会も何ら手を打っていないとも思う。この本を手に取った、君達に任務を与えたいと思う!(多少、押し付けがましいが、そこは気にせずに・・・)皆が夢を持てる社会・組織にする為に、せめて、自分だけでも変わるように、日々鍛錬して欲しい!!

■「業務処理」と「情報処理」
 一見複雑そうに見える私たちの仕事も、仕事の原理・原則の視点から見れば、いたって簡単・シンプルなものだ。 例えば、私たちが日々行なっている様々な仕事も「誰が?」という視点でみれば、たった二つの仕事から成り立っていることが分かる。それは、「自分一人」でやる仕事と「他人と共同」でやる仕事の二つだ。「自分一人」でやる仕事とは、PCの入力、書類作成などのデスクワークだ。一方、「他人と共同」でやる仕事とは、会議、打合せ、商談、電話対応などのコミュニケーションがらみの仕事だ。 よって、デスクワークは業務処理、コミュニケーションは情報処理といえると思う。 新入社員でも社長でも、営業マンでも研究職、経理マンでも、この二つの仕事の組合せで全体の仕事が成り立っているはずだ。まぁ、こんな事言ったら、経営者サイドには叱られそうだが、新入社員の仕事も社長の仕事も一緒だということだ。そして、この二つの仕事の割合は、概ね4:6で情報処理がらみの仕事のほうが多いというのが一般的となっている。4:6ではないにしろ、2:8でも3:7でも、どんな割合にしろ情報処理の仕事の方が多い事は間違いない。逆に50%をきる事は、まずありえないのだ。もし、コミュニケーションへの投下時間が50%を切る人がいたら、その人は仕事ができていないと言う事になる。つまり、私たちの仕事の6割以上は、情報処理業務だ。業務改善や企業・組織変革に取組む際も、この事実を知らずに行なうと徒労に終わってしまう(かなしきかな)。まずは、6割を占める情報処理がらみの仕事の改善・改革なくして業務改善、企業変革はありえないのが道理だという事実をしっかり認識すべきだ。

■「戦略情報」と「戦術情報」
 日々、ビジネスの現場で行なわれるコミュニケーションにおいて、様々な情報が交わされている。実は、これらの情報は二つの種類にわけることができる。私の中では、この二つを※7戦略情報と※7戦術情報と称している。戦略情報とは、組織の中でトップダウンで伝えられる情報であり、その内容は目標や指示などだ。例えば、全社的に見れば、その企業の経営方針や、今期の経営目標、あるいはその方針・目標に基づいた、各部への経営陣からの指示などである。また、ひとつの部や課など、チームのレベルで見れば、部としての今期の目標や、部長から部下への指示などだ。この戦略情報は、チームのメンバーを動かし、力を発揮させるための動機付けを目的に、伝えられる。だから、社員のやる気を左右する情報ということになるのだ。もうひとつの戦術情報とは、トップダウン以外の形で伝えられる情報だ。ボトムアップで伝えられる情報、あるいは一般社員同士、課長同士、部長同士など、上下の関係ではなく、横の関係でやり取りされる情報のことだ。その内容を簡単に表現すると、「どのように仕事をやろうか」ということを伝えるものである。例えば、前月比で3割増というチームの目標を達成するため、あるメンバーの目標額はいくら、別のメンバーはいくらといった、チーム内でやり取りされるのが戦術情報。また、営業部が目標を達成するため、営業部長と宣伝部長が販売促進活動の強化を話し合うのも、戦術情報の交換になる。営業マンが、得意先の担当者と交わす商談内容も、戦術情報となる。つまり戦術情報とは、仕事をうまく進めることを目的に、社員間で伝えられる情報なのだ。だから、メンバー一人ひとりの、仕事のスキルに関わる情報となるのである。

■「目標設定と専門知識」
 仕事を効率よく遂行するには、目標が必要だ(勿論、大きく言えば生きていく為には!ともいえる)。これはスポーツでたとえればわかりやすい。サッカーの日本代表も、ただ「頑張れ」と言われるだけでは、「おいおい、何をどう頑張るんだよ?!」と、どう頑張ればいいのかわからず、ベスト・パフォーマンスを発揮できない。でも、W杯一次リーグ突破という目標があれば、具体的に何をやるかが見えてくる。ベルギー戦の準備として何をするのか、成すべきことが具体的に把握できるのだ。目標を設定するときに肝心なのは、その目標が妥当なものであること。では、妥当な目標とは、どんなものか?この点、世にあるビジネス指南書などでは「ちょっと頑張ればできる」くらいが妥当な目標だそうだ。この説明だけでは不親切だが、これを具体的に言えば、たとえばこれまで一時間かけてやっていた仕事をする場合、「投下時間を 10分だけ短縮して、50分で完遂する」ことが、ちょっと頑張ればできる目標なのである。この手法は、会議や報告書の作成、営業マンなら顧客訪問など、継続的にやる仕事の目標設定に適している。もう一つの目標設定法は、今までとは違う取組みにチャレンジしてみることだ。これは、企画型の仕事に適している。たとえば、新入社員の歓迎式という仕事をする場合、会場を変えるとか、新たなイベントを企画するなど、何か違った要素を一つ二つ取り入れることが、ちょっと頑張ればできる目標となる。そしてみなさんにぜひ理解してほしいのは、ちょっと頑張ればできる目標を設定することは、専門知識のワンランクアップにつながるのということだ。一時間かけていた仕事が 50分でできるようになり、新たなイベントを仕切ることができれば、専門知識の質が上がり、量が増えることにつながるのだ。みなさんのスキルアップのためにも、目標設定は重要なビジネス要素だと認識して、ドンドン目標設定をしていこう!!

■「フラット型組織とピラミッド型組織」
 多くのビジネス書が説く、「これからの日本企業は、従来の※8ピラミッド型組織ではダメだ。※8フラット型組織に改革すべき」との主張に、私は異議を唱えたい。我々の仕事には、業務処理と情報処理の二つがある。ピラミッド型組織というのは、実は業務処理を効率よく行なうためのものなのだ。一人では処理できないために二人でやる、二人ではできないために四人でやる。人数を増やしながら、役割分担を決め、さらに指示・監督するものと、業務処理を行う者とを置く。こうしてできあがったのが、ピラミッド型組織なのである。 実は、業務処理を効率よく行うためのピラミッド型組織を、情報処理のために利用したことが、企業組織の過ちだったのだ。トップダウンの戦略情報は、社員のやる気に直結する情報だから、これをピラミッド型組織を使って伝達すると、経営陣から一般の社員に至るまで、役員や部長、課長と、何段階ものクッションを経ることになってしまう。その過程で、情報は変質してしまうのだ。(皆さんも、一度はやった経験があると思うが、伝言ゲームを想像してもらうと、分かりやすい。大体の場合、最初の人と最後の人の内容は微妙に違かったりする。) 情報が部長に伝えられた段階で、元の情報に部長の主観が加えられ、さらに次ぎの段階で課長の主観が加えられる。その分、社長や経営陣の主観が排除されていく。これでは、経営トップの思いや考えが、一般社員には、伝わらず、その結果、彼らのやる気をも削ぐことになるのだ。 逆に戦術情報がトップに伝わらなければ、社長が現場の社員の仕事がわかっていないという組織になってしまう。昨今の食品業界で、商品の品質表示の偽造事件が続発している。事件を起こした企業の社長が決まって口にするのが、「現場でのそうした行為を知らなかった」という台詞だ。(私にしてみれば、「おいおい、知らない訳無いだろ。本当に知らないなら、大問題だ!」とTVに向かって叫んだりもしてみたが) こうした組織にならないためにやるべきことは、ピラミッド型組織を廃するのではなく、トップダウンの情報が、経営陣から一般社員にダイレクトに伝達されるシステムを構築すること。つまり情報伝達のシステムをフラット化することなのだ。
 

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