■□■□ 第1章 仕事の資源とそのバランス ■□■□ |
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1 仕事の5つの資源 | |
私たちが仕事をするとき、誰もが使う共通の資源(材料)があります。社長であろうと、新入社員であろうと、この資源の要素は同じです。違うのは、自分の自由になる、あるいはコントロールできる資源の質と量であり、その使い方なのです。 この本のテーマである「情報共有化」の「情報」も、この共通の資源の1つであるわけです。ビジネス書などでは、「情報化社会の到来」の名のもとに、盛んに次のようなことがいわれています。いわく「これまでの経営は、人とモノと金の経営だったが、今や情報が新たな経営資源として加わった」。しかしこの考え方はナンセンスです。それどころか、経営の本質、仕事の進め方の本質を見失う原因となります。 そのよい例が、昨今よくきく企業の「情報武装化戦略」の実態です。「情報という経営資源を有効に活用するためには社員1人にパソコン1台だ!」と元気よく買いそろえてはみたものの、コンセントすら差し込まれずに「置きコン」化している会社が後を絶ちません。 昔も今も情報は重要な経営資源でした。なぜなら「仕事は自分と他人の共同作業」だからです。これはいつの時代にあっても変わりません。共同作業である以上、仕事をする仲間との情報交換は不可欠です。はるか昔、私たちの祖先が狩猟生活を送っていたときでさえ、「マンモスが来るぞ!」という見張りの知らせは狩猟という共同作業を行なううえでの重要な情報としてメンバーに伝達されていたことでしょう。 情報は決して新たに加わった経営資源ではありません。お金よりずっと以前からある、重要な共同作業のための資源なのです。新たに加わったかのように思えるのは、私たちがコントロールできないほど、情報の量が増大したためなのです。ですから「情報武装化」で大切なことは、情報処理のためのパソコン導入もあるかもしれませんが、ビックバンのように拡大しつづける情報を私たちがいかにコントロールするかということなのです。 そのためには、誰もが仕事を行なうにあたって活用する、情報も含まれた仕事の資源をもう1度見直す必要があります。 仕事の資源は全部で5つあります。人、モノ、お金、情報、時間です。お金がこの世に誕生して以来、この5つは常に重要な仕事の資源でありつづけたのです。この5つの資源は相互に関連しあっています。私たちの仕事は、この5つの資源のバランスのうえに成り立っているといえます。仕事がうまくいかなかったり、成果が思うようにあがらないのは、このバランスが崩れているからなのです。 本当の意味で情報武装化は、他の4つの資源を含めて考えなければ、相応の効果が得られません。甲子園出場の高校野球のチーム戦力分析のように、自分やチーム、会社の5つの資源がどのようなバランスにあるか、考えてみることがまず第1です。 情報が経営資源に新たに加わった、とまちがった認識がされてしまった現在の状況は、この5つのバランスが崩れていると考えられます。情報の増大、さらに各種のイノベーションによって時間も突出するようになりました。それを表したのが下の図です。 この本では5つの資源のバランス対策を、長年のコンサルティングの経験からその得意分野である「人」の切り口で提案していきます。突出してしまった情報と時間のアンバランスを、人のパワーアップによって改善していきます。それが唯一の方法であると確信しています。なぜなら仕事をするのは情報ではなく、私たち人間だからです。
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