■□■□ はじめに ■□■□

 ひょんなきっかけから、タイムマネジメントのコンサルタントになって10数年が過ぎてしまった。
 仕事柄、「きちんと計画を立てて、脱サラしたんでしょうね。」とよく聞かれる。実は、この手の質問は一番苦手である。「そうなんです。緻密な計画のもと、脱サラし、その後も綿密な計画のもと、今日まで来ました。」と答えられれば、苦手とすることもないのだが、まるっきり逆の状態なので、正直に答えると、セミナーの受講者や、指導先の従業員の方々の信頼、信用を一瞬にして失いそうで、「そんなこともないですよ。」とついつい適当にごまかすことと、なってしまう。
 実際のところ、タイムマネジメントのコンサルタントになろうと思って、独立した訳でもないし、独立したら本を出版しようとも思ったこともなかった。全てが出合い頭の交通事故のようなものである。こちらの主体的な意思など、何もなかったといえる。ましてや、残業王をひた走っていたサラリーマン時代の私を知る人は、今でも、私とタイムマネジメントは結びつかないようである。
 ひょっとすると、自分自身が一番違和感を感じているのかもしれない。
 しかし、そうはいっても、インターネットで、タイムマネジントを検索すると、私の名前はたくさんヒットするし、自分で開発して来た、タイムマネジメントの理論にも、それなりに(多少謙遜気味の表現)の自信を持てるようになって来ているのも事実である。
 少なくとも、タイムマネジメントのハウツウ(やり方)ではなく、理論と言っているのは、世界広しといえども、私ぐらいではないだろうかとも思う。
 タイムマネジメント、簡単にいえば仕事のすすめ方の技術は、体系的な理論として捉えることが可能だと確信している。むずかしく言えば、普遍性があるということ、誰にでもあてはまるんだよ、ということである。
 本書では、誰にでもあてはまるタイムマネジメントを、誰にでもわかりやすく、説明してみようと思う。わかりづらいところ、納得できないところがあれば、読者の皆様の生の声をどんどん頂戴したいと思う。
 それによって、まだヨチヨチ歩き状態の理論も、成長、発展し、また皆様に還元することにつながると確信している。

■□■□ 第1章 仕事の管理がタイムマネジメント ■□■□
■ 「お仕事OS研究所」
 お仕事のOS研究所を設立してみた。といっても、当方が勝手に設立しているだけなのだが、本書を手に取った皆さんは、自動的に研究員として、任命しようと思う。お仕事OSとは、[仕事の進め方(Operating)の標準(Standard)]である。ようは、あらゆる仕事に共通する原理、原則を体系的にまとめたものだ。今回のテーマでもある「四つの時間と四隅の時間」も仕事のOSの一部である。
 1.すべての仕事は、「自分一人でやる」か「他人と共同でやる」の2つに分類できる。
 2.すべての仕事には、はじめ(開始)とおわり(期限)がある。
 そして、上記1.2.をミックスすると・・・仕事には四つの時間しか存在していないのだ。自分ひとりの“はじめ”“おわり”、他人と共同の“はじめ”“おわり”である。また、四つの時間の中でも「自分一人の仕事は、はじめ(開始)が大事で、他人と共同の仕事はおわり(期限)が大事」なのである。なんでこの二つが大事なのかって?・・・それは、例えば、会議の約束をお客様とするとき。大抵の方は「○日の○○時は空いてますか?」と約束のはじめの時間しか言わない事だろうし、手帳にも「○月○日○時、××会社打合せ」としか、記入しないのが一般的だろう。はっきり言って、この程度のことはやってあたりまえ、打合せに遅刻しないのも社会人としては当たり前!しかし、研究員のみな様にはワンランク上の手法を教えよう。それは、打合せなりなんなり、他人と共同の仕事をする時には、はじめはしかり、終わりの約束も告げてみる事だ。「○日の○○時〜○○時までの、1時間お時間を下さい。」と言うことで、相手は(もちろん自分自身も)「あぁ、1時間しかないならその間に決めなくちゃ」という具合にキビキビとした仕事をするだろうし、短時間で会議をする為の資料作成も頑張るという事ができることは請け合いである。又、会議が延びてしまって、その後の予定が狂う事も避けられる。その上、会議が伸びてしまっても、相手から見れば「本当は1時間って言っていたのに、こっちの為に時間を延ばしてくれている(誠意があるなぁ。)」と感じてくれる。おわりの時間を決めておくだけで、メリットは幾らでもあるのだ。少なくともデメリットはない。次に、自分一人のはじめに注目してみよう!これに注目できている人は、日本中みても結構少数派なはずだ。一日の中で、抱えている仕事の1番大事なものを、1時間でも良いから誰にも邪魔されずできたら・・・・残業量は確実に減るし、こなせる仕事量も増えるだろう。最初に、自分ひとりの仕事のはじめを手帳なりに書いてみよう。そして、確実にその仕事をその日に終らせよう。又、邪魔が入らないように、上司にも同僚にも「○時から○時までは電話を取り次がないで下さい。」なり、「自分に質問があったらそれ以外の時間にしてください」なりを告げ、邪魔が入らないように複線をはる事が大事だ。このように、複雑に見える仕事もお仕事のOSで考えると、とても簡単に捉える事ができるし、結構簡単な技術で仕事を上手く進める事ができる。皆さんも、お仕事OS研究員の一員として、早速実行してみよう。


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