スーパーコミュニケーションレクチャー
※「図解 仕事ができる人のタイムマネジメント」第50節・第51節・第52節より引用
コミュニケーションもタイムマネジメントのひとつ
仕事には、”自分ひとりでやる仕事”と”他人と共同でやる仕事”があることを、第1部ですでに説明しました。
ひとりでやる仕事として皆さんは、書類作りや、パソコンでのデータ処理及び分析、部下が提出した書類のチェックなどを思い浮かべるでしょう。これらの仕事を一言で表現すれば、業務処理となります。一方、他人と共同でやる仕事とは、会議や商談、ミーティング、電話連絡などですが、これらを一言で括れば、情報処理(コミュニケーション業務)であると言えます。
それでは、皆さんは自分が一日のうち、2つの仕事をどれくらいの比率で行なっていると思いますか。仕事の科学研究会が企業コンサルタントとして収集したデータでは、業種を問わず、一般社員から社長まで、全社員の平均として、業務処理が4割、情報処理が6割となっています。この比率は役職によって違います。役職が上になり、部下が増える程、仕事の指示や委任などが増え、上司と部下の間で情報の中継役ともなる役割を思えば、コミュニケーション業務の比率が高くなるのは、当然です。
皆さんが自分の仕事を全うしたいと思うのなら、仕事の6割以上を占めるコミュニケーション業務の重要性にまず、着目してほしいのです。この第3部ではコミュニケーションのスキルについて、若干ながら言及するつもりなのですが、読者の中には「タイムマネジメントの本なのに、どうしてコミュニケーションの話なんかするんだ」と、疑問に持つ方もいるでしょう。
しかし、タイムマネジメントは皆さんの仕事の生産性を向上させるためのものであり、その仕事の中で、コミュニケーションが大きな比重を占める以上、コミュニケーションもまた、タイムマネジメントスキルのひとつなのです。
自分を知ってもらうこと、他人を動かすこと
情報処理には、大別して次の3つがあります。すなわち、情報の収集と、情報の加工、情報の発信です。
情報の収集とは、具体的には新聞や本などの資料を読む、お客さんや同僚と会話をすることです。この時、皆さんが利用するスキルは、「読む」と「聞く」の2つです。情報の加工とは、収集した情報を取捨選択し、組み合わせて、新たな情報を作り上げることで、企画や提案をまとめる作業がそれです。そのためのスキルが、「考える」や「書く」などです。そして情報の発信は、自分の考えや意見を部下に伝える、取引先に伝えるという行為です。例えば企画書の説明、仕事の委任、商談などであり、必要なスキルは「話す」と「書く」となります。以上、収集と加工、発信の3つが、コミュニケーションを実現するために必要な作業なのです。
では、何のためにコミュニケーションをするのか?
会議や商談で何故、コミュニケーションが大切なのか?
会議の目的は、部の方針をメンバー全員に伝え、その方針に基づいて行動するよう、確認することです。商談の目的は、顧客に自社の提案を示し、理解を得ることですし、企画書の目的は自分のアイディアを披露し、理解してもらうことです。
これは言い換えれば、自分を知ってもらう(知っていただく)こと、他人を動かす(動いていただく)ことなのです。会議で部の方針を伝えるのも、部長の考えをメンバーに知ってもらうことですし、自社の提案を理解してもらうのは、提案者である自分(自社)の考えを理解してもらうこと、つまり自分を知ってもらうことなのです。
この本の冒頭で、仕事とは”自分と他人との共同作業”であると言いましたが、共同作業だからこそ、他人に自分を知ってもらう、他人を動かすことが大切なのは、言うまでもないことです。そのためにもコミュニケーションの重要さを認識してほしいのです。
他人を動かすには主観と客観の両方を伝えなくてはならない
コミュニケーションの目的は、自分を知ってもらうこと、他人を動かすことだと、前節で説明しました。では、その目的を達成するためには、何を伝えたらいいのか。それは主観と客観です。主観とは、情報の発信者である皆さんの思い、考えなどですし、客観とは具体的な数字や事実です。この2つの要素をバランス良く伝えることで、良好なコミュニケーションを実現できるのです。
例えば、皆さんが営業会議で自分の方針を部下に伝える時、「今月の営業目標は前月比3割増だ」と言うだけでは、部下は動いてくれないでしょう。何故、3割増なのかがわからなければ、部下は目標の設定に納得できないし、納得できなければ行動できません。この「何故?」を表現するのが、皆さんの思いや考えなどの主観なのです。
逆に主観だけ伝えても、具体的な数字目標が伝えられず、ただ「頑張ってくれよ」とか、「頼んだよ」としか言えなければ、やはり部下は動いてくれません。自分を知ってもらい、他人を動かすためには、主観と客観の両方を伝えなければならないのです。
ところが、とかく日本人は自分の主観を口にするのを嫌います。だから、数字目標だけを言放しにしてしまいがちです。その反面、他人の主観を気にし、その主観に敏感に反応してしまう傾向も強い。するとどうなるか。部下の方では、「部長は俺の事が嫌いなんじゃないか」とか、「部長は俺の事を頼りにならん奴だとボヤいていたそうだが、だから厳しい目標を押し付けるんだ」と、憶測で相手の主観を補おうとします。こうなると、ありもしない主観が部下の行動を縛り、数字目標という客観的事実がなおざりになってしまう…。こんなケースが頻繁に起きているのが、現実のビジネスの現場なのです。
もし主観と客観をバランスをバランスよく伝えることができれば、皆さんの仕事の成果が飛躍的に改善されるのですが…。 |