■□■□ 第4時限 人に仕事を任せて、チーム力を向上させる方法 ■□■□ | |||||||||||||||||||||
28 仕事に人を貼り付ける 「人に仕事を貼り付ける」から成果が出ないのです。 「仕事に人を貼り付ける」または「仕事に時間を貼り付ける」ことで、あなたの仕事は成果にまっしぐらになります。 |
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この章では、仕事の役割分担を通して(人に仕事を任せて)、自分の時間をつくるだけでなく、チーム力を向上させる方法について説明します。 ところで、私は常々、世の中の会社、組織の多くは、人事対策で大きな過ちを犯していると、思っています。 「あいつには、何をさせようか?」と、考える人事対策は、間違いで、「この仕事は、誰にさせようか?」が正解です。 不況の中、リストラ、リストラで会社も個人も大変な状況ですが、主だった成果が出ない背景に、「あいつには、何をさせようか?」が、根強く残っているように思います。 本当は、何もやらせることがないにもかかわらず、むりやり仕事をつくって、その仕事をやらせていては、いい成果が出るはずもありません。 この発想は、人に限ったことではありません。 時間についても同様なことが行われています。 「10時から、何をしようか?」と、 「この仕事は、10時からやろうかな?」では、 似ているようで、まったく別物です。 どうも、ビジネスの世界では、本質を見失って、小手先で事を運ぶ傾向がしみついているようです。 本質は、仕事そのものです。 その仕事がはっきりしないから、人をベースに考えたり、時間をベースに、ついつい考えてしまうわけです。 これでは、優先順位のスキルがあったとしても、なかなか成果としては、現れないと思います。 なぜなら、本末転倒の取り組み方だからです。 しかし、それが目立たないのは、みんながそのスタイルをとっているからです。 だから、良くないことにもかかわらず、差がつかないので、ついつい昨日と同じ方法をよってしまう。たぶん、これが現実だと思います。 大事なことは、人でなく、時間でなく、仕事そのものをベースに考えることです。 つまり、 「仕事に人を貼り付ける」 「仕事に時間を貼り付ける」 この方式に切り替えたら間違いなく、あなたの仕事は成果にまっしぐらということになります。
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29 チームが存在する理由とは? 一人では仕事ができないからチームがあります。 とすれば逆に、仕事の時間が足りなければ処理能力を伸ばすか、仕事を捨てる。 専門知識が足りなければノウハウを蓄積または導入する事です。 |
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会社や、組織、チームは、どうして、複数の人が集まって仕事をしているのでしょうか? 気があった仲間だと楽しいとか、一人では淋しいとかの理由で、課や部や会社ができていることは、まずないと思います。 小さな会社で設立間際では、そんな理由もあるかもしれませんが、ある程度、大きくなって実績も上がってくると、そんな理由は、通用しなくなります。 では、どうして人が集まるのでしょうか? この答えは、前節の「仕事に人を貼り付ける」を考えれば、容易に理解できます。 仕事を人に貼り付けていったら、仕事が残って、貼り付ける人がいなくなったので、一人増え、二人増えと、人が集まったということだと思います。 簡単に言えば、「一人ではできない」ので、二人、三人となったということです。 これがポイントです。 「一人では、できなくなった理由」というのが必ずあるはずです。ここをしっかり見つめると、強いチームの作り方の基礎も見えてきます。 一人では、できなくなって、「とりあえず、誰かいればいいや」、という事もあるでしょうし、「誰でも、というわけにはいかない、これこれの技術をもってないと駄目だ」、ということもあるでしょう。 前者は、単に人が足りないというケース。 後者は、専門知識が足りないというケースです。 チームには、この二つの要素が必ず存在するということです。 絶対的、物理的に必要な人員と、仕事を処理するための専門知識です。 このことは、極めて当たり前のことですが、実務現場を見ると、単に数合わせで、専門知識不足に泣くリーダーがいたり、専門的技術はあるものの、物理的頭数がなくて、処理が進まず悩むリーダーがいたりします。 なかなか、理にかなった形で、仕事に望めない現実というものがあります。 そこで、大事なことは、あきらめて、ギブアップするか、それともあきらめずに対策をとるかです。 対策をとろうと思っている方に、アドバイス。 頭数が足りないのであれば、一人ひとりの処理量を増やすスキルを身につけさせることと同時に、仕事を捨てる事。 専門知識が不足しているのであれば、日々、専門スキルがレベルアップするしくみをつくる(後述します)ことです。
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30 「自責と他責」を考える 納得して役割分担された自責傾向に、妥協して役割分担された人は他責傾向になりがちです。 いくら、権限を与えても、他責をベースとした責任感では、こわくて容易に任せられません。 |
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「悪いのは、失敗した自分のせい」とするのが自責。 逆に「他人のせい」とするのが他責です。 人間とは、おもしろいもので、自責傾向の強い人と他責傾向の強い人に二分できます。 状況に応じて、自責になったり、他責にしたりと使い分ける人は少ないようです。 ましてや、一つの事柄を自責の部分と他責の部分を冷静に分解して把握できる人はまれです。 役割分担を語るうえで、この話を持ち出したのにはわけがあります。この自責、他責の発想と役割分担には密接な関係があります。 結論からいえば、納得して役割分担された人は自責傾向に、妥協して役割分担された人は他責の傾向が顕著になります。 「ま、しょうがないから引き受けるか」、と妥協して始めた仕事が、上手くいかないとき、「それは、私の力不足でした」、と心底思える人はどれだけいるでしょうか。 しかし、そう思える人こそ、あてにもできるし、仕事もできる人に他なりません。 自責で物事を見れば、改善策は山ほど見つかり、実行性も高いものです。 しかし、他責で物事を見れば、改善策はある程度見つかるかもしれませんが、実行性は乏しい事になります。 なぜなら、他責の改善策は、相手、他人に改善を求めることになります。 これは、自分がやるのと違って、人任せです。 やるかやらないかは、相手次第という、不確かさが常についてまわることになります。 ところが、自責は、改善する主体は自分ですから 、正しく、やるかやらないかも自分の責任。自分さえ、動き出せば良い、ということになります。 役割分担するときも、よく、責任と権限ということがいわれます。 しかし、その責任には、自責と他責があるわけで、どっちを選ぶかで成果(あるいはダメージ)に大きな差が生じてきます。 責任は、役割分担された人間が感じること、果すことで、権限は、役割分担させる人間がされた人間に与えるものです。 いくら、権限を与えても、その本人が他責をベースとした責任感では、こわくて、とても任せる事はできないと、私は思っています。
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31 「主体性に関するデータ」を考える 「主体的に仕事をする」とか、「積極的に仕事をする」という意味を改めて考えてみましょう。 「その場合、100%主体的には無理なのだ、という事実を、知っておいたほうがよいでしょう。 |
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「主体的に仕事をする」とか、「積極的に仕事をする」とかの意味合いの社是、社訓、方針書を見るたびに思うことがあります。 これを書いた人は、どんな思いで書いたのかなあとか、この人のいう、主体的とはどういうことかなあとか、意地悪くなると、主体的に仕事をするというのを、どう具体的に評価しているのかなあ、なんて考えると、その会社の風土と体質も見えてくるような気がします。 人事孝価のシートにも「主体性」が加味されている企業は多いでしょう。多いどころか、加味されていない企業を探すほうが難しいと思います。 しかし、正直なところ、どうやって主体性を評価するんだと常々、疑問にも思っています。 評価するという事は、数字で把握するということ(客観的にすること)ですから、主体性を数字に置き換えなければなりません。 各社、本当にやれているのでしょうか。 答えは、やれていない。ということになると思います。 その一つの証拠として、人事考価に不満のない人はほとんどいないでしょう。 みんな不満を持っているといっても過言ではないと思います。 「売上げが悪いから評価も悪いよ」、といわれれば、まだ少しは納得できます。 ただ、他責の発想が強い人は、「それは私のせいじゃない!」、と反論すると思いますが・・・・・。 しかし、「君は主体性がないから評価も悪いよ」、といわれて、納得する人は、極めて自責の発想が強い人か、よっぽどの人格者か、世捨て人のいずれかだと思います。 多くの人は、「何を言ってるんだ!」、とムカつく。 場合によっては、大議論になるかもしれません。 そんなとき、第16節で紹介した、計画に関するデータを思い出してもらいたいものです(図31参照)。 自分が意図したスケジュールが、10%以上の人は、主体的に仕事に取り組んだと評価して問題はないと私は思っています。 逆にそれが、30%を超しているようだと、主体性の行き過ぎとして警告すべき状況です。 マイペース、わがまま、相手の立場を理解しない−−−−自分勝手な仕事の進め方になっている可能性が高いと思います。 つまり、100%主体的には、無理なのだ、という事実を、知っておいたほうがよいのです。
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32 「仕事を他人に任せる技術」を知ろう 仕事には“主観”と“客観”の二面性があります。 客観的な要素は部下との共通認識が可能ですし、共通認識が持てるなら、部下に委任できるのです。 |
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仕事を人に任せるには、どうしたらいいでしょうか。 以下は、コンサルタントとB部長の会話です。 「この場合の対処法は、まず、“優先順位”をつけること。 次いで“他人でもいい仕事”を見つけることです。 B部長にとって優先順位が高いのは何ですか?」 「M社の見積もりです」 「では、M社の見積もりは部長がやってください。 そして、S社の見積もりは部下に任せましょう」 「見積もりは、今まで私が一人でやってたことです。それをいきなり任せると言っても、彼には初めての仕事で、何を基準に仕事をすればいいか、わからないでしょう」 「部長、ここは“委任”のスキルを使いましょう。 仕事には“主観”と“客観”の二面性があると説明しましたね。 客観的な要素は部下との共通認識が可能だし、共通認識が持てるなら、部下に委任することができるんですよ」 「具体的にはどうすればいいんですか?」 「客観的な要素とは、数字で表現できるのも、つまり目的や期限です。 新商品ですから、市場に認知させるのが第一の目的ですね。そのためには、どれくらいの量を、どれくらいの価格で提供するのか、これを部下に指示すること。 そして、いつまでに見積もりを提出するのか、これも明確に指示してください。 それに、部下にとっては初めてでも、部長がやってきた過去の事例があるじゃないですか。それを基準にして、少しでもレベルアップするよう、指導すればいいんです」 「同じようにやれと言えばいいんですか?」 「それではレベルアップにはなりません。 例えば『これを提出したときには、先方からこんな要望があったので、こういうデータを示してくれ、こんな書き方にしてくれ』と指示すれば、前回の見積もりよりもレベルアップするんじゃないですか?」 「なるほど・・・・・・。そうすれば、S社の見積もりはレベルアップするし、私はM社の見積もりに集中する事ができますね」 このように役割分担や、仕事の委任は、一人ひとりの能力(スキル)を向上させると同時に、チームや組織の力量アップにも、つながることになるのです。
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33 「自分の強み」を知ろう 自分の強みと弱みを評価して、強みはのばす、弱みは改善することは当然です。 その際のポイントは、成果の悪いときは強みをのばすこと、成果の良いときは弱みを改善する事です。 |
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前節で役割分担や、仕事の委任は、一人ひとりの能力(スキル)を向上させると同時に、チームや組織の力量アップにも、つながることを学びました。 この節では、その学ぶスピードを早くしたり、効果的に行うための方法についてお話します。 そこで、もう一度、思い出してもらいたいのが、「どうしてチームがあるの?」ということです。 人手が足りないのと、専門知識・技術が足りないので、チームが必要となるわけですが(実は、そんな事を一切考えずにチーム編成されていることが現実)、このことを頭に入れるとき、いわゆる「キャリアアップ」とか、「キャリアディベロップ」ということの重要性が見えてきます。 欧米人の履歴書には、この自分の「キャリア」がしっかりと書き込まれています。 いわば、各自の強み、セールスポイントということです。 ちょっと話は脱線しますが、昨年私が仲間と、NPO法人日本タイムマネジメント普及協会を設立したのも、このキャリアを意識してのことです(霞ヶ関のキャリアではありませんよ)。 履歴書に「タイムマネジメントトレーニングコース修了」なんて書いてあれば、採用の際、有利になるとか、募集する側も、「タイムマネジメントスキルの高い人求む!」、なんて広告が一般的になる日を夢みて設立したわけです。 さて、自分の強みを知るということは、逆に自分の弱みを知ることでもあります。 それは何のためにやるのか? 私は、昨日より今日、今日より明日、力をつける(成長する)ためにやると思っています。 また、自分の強み、弱みが分かれば、仕事に対する処し方も随分合理的にやれるはずです。 また、強いチームを作ろうと思えば、自分はもとより、各メンバーの強み、弱みを把握することは、リーダーの務めとなります(これができているリーダーは、ほとんど天然記念物ものなのが日本のビジネス現場?)。 図33は、そんなリーダーのための、チェックチャートです。 仕事のOSで、仕事はパフォーマンス(外部への働きかけ)と、リソーセス(内部への働きかけ)というのがありました。それぞれの強みと弱みを評価(書き出し)し、強みはのばす、弱みは改善するだけでも、チームの成果は大きく改善されます。 その際の留意点としては、成果の悪いときは強みをのばすこと、成果の良いときは弱みの改善をすることです。 しかし、多くの日本企業では、この逆が横行しています。 だからますます、日本経済は悪くなるわけで、そろそろ気がつきましょう! 大きな手術をするときは、体力がないと、まともな医者はその手術をしませんよ!
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34 「仕事の委任のテクニック」を知ろう 役割分担、仕事の委任の下手な人、まったくそれを行なわず全部自分で抱え込んでしまう人はいるものです。 仕事の全体像が分かるような形での仕事の役割分担、委任をしましょう。 |
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役割分担、仕事の委任の下手な人、またはまったくそれを行なわず、全部自分で抱え込んでしまう人の、一つの決まり文句があります。 「忙しくて、教えるヒマ、伝えるヒマもないし、オレがやったほうが早いし、正確だ!」です。 役割分担をしたり、仕事の委任をする人はつまり、部下がいる人です。 今までの実績を認められてそのポジションについたわけですから、ある意味仕事のできる人と周囲には、思われているはずです。 しかし、自分で仕事をするのと、チームで仕事をするのとでは、ちょっとばかりスキル(技術)が異なります。「名選手、名監督には必ずしもあらず」、ということがしばしば起こります。 では、どうしたらよいのでしょうか? 答えは、先ほどの、役割分担、委任の下手な人、またはまったくしない人の、言い訳の中にヒントがあります。 「教えるヒマがない」−−−−−もっともなご意見ですが、どうして、そうなるか考えてもらえばいいと思います。 答えは簡単です。その仕事の期限が迫っているからではありませんか?その仕事に使える時間予算が少ないからですよね?じゃあどうして?この答えも簡単明瞭です。その仕事を認知するのが遅れた。または、着手するのが遅れたからです。もっと早めに認知し、着手していれば、教えるくらいの時間は取れたはずです。 「オレがやったほうが早い」−−−−−これも当然でしょう。実績を認められて、部下を持っているわけだから。でもどうして、早くなくちゃいけないの? この答えも、前と一緒なことは、もうみなさんおわかりですよね。期限が迫っている。裏返せば、スタートが遅れた以外の何物でもありません。一言でいえば、全部、着手が遅れた「あなたが悪い!」ということに行き着きます。自分一人でやる場合は、「すべての責任は、我にあり」ですから、多少の仕事の進め方に問題があっても、なんとかなりますが、チームでの仕事は、そうはいきません。リーダーの責任の重要なポイントとして、早期の着手は絶対必要な条件です。 「オレがやったほうが正確だ」−−−−−これも当然ですが、どうして部下には正確にできないの? 答えは、簡単です。場数を踏ませていないからです。また、正確にできるよう、技術がつくような指導をして来なかったのは誰だ?ということになります。 部下のスキルアップのためには、スキルが乏しいわけですから、その分、投下時間にゆとりをもたせる。つまり、早目早目の指示を出すことがポイントです。帰宅間際に仕事を頼むのではなく、朝一番で頼む。そういうことがスキルアップにつながるわけです。 もう一つは、仕事に真剣に取り組むためには、仕事の動機、目的を知ることはたいへん重要です。その意味でも、仕事の全体像を分かるような形での仕事の役割分担、委任をしたいものです。
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