■□■□ 第2時限 「成果を出す」ための計画のたて方 ■□■□ | ||||||||||||||||||||
13 「計画立案の三つの要素」を知ろう 仕事の生産性は、「投下時間」「計画の質」「計画の量」の三つの要素の方程式で決まります。 成果が出ない理由は、計画の立て方自体に大きな問題があるのです。 |
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この章では、「成果を出す」ための「計画の立て方」を考えることにします。 成果を出す計画とは、どんな計画でしょうか。そこから考えてみましょう。 成果を出すためには、まず当然実行しなければなりません。つまり、実行可能な計画であることが大前提です。これは、当たり前の当たり前。ところが、実行不可能な計画のいかに多いことか? 身のほど知らず、むこうみず、思い込みなど、実行不可能な計画なり、目標ができあがる心模様があります。そんなとき、もうちょっと、冷静に事を見つめ、計画を立てることができれば、貴重な時間の無駄使いをしかくてもすむはずです。 冷静に計画を立てるには、計画のしくみを知っておくことは不可欠です。 それを知らずして、目標による管理や、年棒制、能力主義、実績主義の評価制度を導入しても、無意味なだけでなく、私には組織犯罪にすら思えて来ます。 一人ひとりにストレスが貯まったり、人を蹴落とすような行動をしたり、極論すれば、人間の尊厳を貶めるようなことにまでいたってしまいます。交通事故死の3倍もの自殺者がいる社会はやっぱり異常です(ちょっと飛躍しすぎでしょうか?私はそうは思っていないのですが・・・)。 成果が出る計画は、一人ひとりが人間としての誇りをもてる計画でなければなりません。 そのためには、計画のしくみを知ることは、たいへん重要です。 下図のように、計画を立てるには「計画の三要素」をしっかりと整理しておく必要があります。 まずは、「投下時間」です。 これは前の章でお話しました。仕事の「はじめ」から「終わり」までの時間です。 そして、計画を立てるときには、この投下時間をどう捉えるか、というと次の二点があります。 一つは、その計画がどれほど時間を要するかという読み。もう一つは、自分自身が持っている時間予算の中で、いかほど、その計画に投入できるか、という自分の時間予算です。 無謀な計画の多くは、計画にかかる時間が、自分の時間予算よりはるかに多いところにあります。これは、身のたけを知らないということになります。 次は、「計画の質」(いかに上手に)と「計画の量」(いかに多く)です。 「質」と「量」をセットにしたのは、この二つは、コインの裏表の関係だからです。片方だけでは存在しません。そして、この裏表の関係を決定するのは、その計画の目的・動機です。 なんのためにやるか、なぜやるかがはっきりしないと、「質」(いかに上手に)や「量」(いかに多く)を決めることはできません。 無謀な計画のパターンの一つに、この目的・動機の考慮不足も挙げられます。 自分の力量の中で、「投下時間」「質」「量」をどう具体的な行動に落とし込むかが、仕事の生産性を決定づけます。(下図:生産性の方程式参照) この作業が計画を立てる、という作業の根幹となる部分です。
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14 「計画だおれの主犯」は誰だ? 「計画立案の三つの要素」をしっかりおさえたうえで、「まず最初の一歩」が計画実現の王道です。 当たり前のことですが、これが、ちょっとは科学的で、ましな成果が出るコツです。 |
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前節で、成果が出ない理由は、計画の立て方自体に大きな問題がある、と話しました。 この節では、もっと詳細に、計画が達成されない状況について考えてみましょう。 計画自体が悪くて、計画どおりにいかない。これは、原因はわかると思いますが、もう少し、掘り下げて、私たちの行動レベルで考えてみましょう。 下図にある空欄を埋めてみて下さい。 あなたの計画の達成度合が見えてきます。 「ローマは一日にしてならず」、という有名な格言があります。 一日一日の積み重ねが週になり、月になり、年になるわけですから、一日の仕事の処理率が30%の人は、多分、計画の達成率は、30%以下になってしまいます。 一日の中でやろうと思ったことが30%しか処理できずして、例えば、年間の目標(計画)の達成度が100%になったとすれば、それは実力ではなく「まぐれ」です。一日でやろうと思ったことが30%の達成度ということは、本当の達成度は30%以下のはずです。 なぜなら、私たちはよく忘れる動物ですから。 人間は、やらなければならないことを平気で忘れます。 野球でいえば、バッターボックスに入って、ピッチャーが投球しているにも関わらず、気づかずに見逃すようなものです。その投球がストライクで、それが3球続いて三振になっても気づかないでいる。場合によっては、バッターボックスに入っていることさえ、気づかずにいることが、ままあります。 ビジネスチャンスを逃してしまうというのは、普段から、その心構えでいないせいでもあります。 「仕事の科学研究会」の調査では、計画が実現しない最大の理由は、その仕事をしなかった、着手しなかった、というのが一番です。未着手では、当然ながら、計画の達成は無理です。 しかし、この理由が一番多いわけです。 仕事を先送りにしているうちに、あっという間に一週間、一ヵ月、一年は過ぎてしまいます。 「まず、やってみるか」が、計画実現の王道であることは確かです。 しかし、そこに重点が置かれすぎると、「計画立案の三要素」を無視した計画でまずやってみても、徒労に終わる確率は高くなります。 ですから、前の節で述べた「計画立案の三要素」をしっかりおさえたうえで、「まず、最初の一歩」―これが、ちょっとは科学的で、ましな成果が出るコツです。
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15 「パレートの法則」と石川啄木現象 仕事の成果の80%は、優先順位の高い仕事の上位20%を遂行することで達成できてしまいます。 「ムダな仕事の排除」ではなく、「重要な仕事の発見」に注意を向けることが生産性のカギです。 |
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みなさんは、「パレートの法則」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? パレートは、19世紀のイタリアの社会経済学者で、あるとき、一国の富の分布について調査を試みました。その結果、どの国でも上位2割の資産家の資産の累計が、その国の資産の八割を占めることを発見しました。これが「パレートの法則」とか、「二割八割の法則」と呼ばれるもので、今日もなお、いたるところで活用されている法則です。 具体的には、昨今のリストラブームにおいて、売上げの低い下位八割の中から廃止すべきラインや事業部が選定されたり、QC(品質管理)活動で発生頻度の高い上位二割の問題点の中から、テーマが選定されたり―といった形で活用されています。 かの「船井総合研究所」の「即日売上倍増法」などもこれにあたると思われます。 この法則を、仕事の成果に照らし合わせてみると、皆さんの仕事の成果の80%は、優先順位の高い仕事の上位20%を遂行することで達成できてしまうといえます。反対に、優先順位の低い下位80%の仕事にすべての時間を費やしても、得られる成果は全体の20%にすぎません。 つまり「いくら仕事を投下しても、優先順位の問題があると成果が上がらない」のです。 これではまさに、「働けど、働けど、わが暮らし楽にならざり」ということで、これを「啄木現象」と呼ばせてもらいます(啄木さんおよび啄木ファンの方々にはたいへん申し訳ないですが・・・)。 さて、上記の点を考慮すると、仕事を進めるうえで重要なポイントは、「大事な仕事、優先順位の高い仕事をいかにキャッチするか、またはそれをキャッチするセンスをいかに鍛えるか」にあるといっても過言ではありません。最近のリストラや生産性向上への取り組みを見ると、「ムダな仕事探し」に精力を注いでいるのが現実のようです。 しかし、いかに「ムダな仕事」を見つけ出し、それを排除しても、その分「重要な仕事、優先順位の高い仕事」を行なわなければ、実は何の意味もないのです。誤解されては困ります。「ムダな仕事の排除」=「重要な仕事への取り組み」ではありません。このことを認識していないと、やはり啄木現象は私たちの日常業務の中にしっかりと根を下ろしたままの状態になってしまいます。 タイムマネジメントセミナー受講者の日英での追跡調査によると、この手法を導入する前と導入した後では、重要な仕事に投下する時間が少なくて20%、多いと60%も増えていることがわかりました。生産性は20%〜30%以上向上しています。これはたいへん注目に値するデータです。 なぜならこれは、「重要な仕事に投下する時間が増えたら生産性が上がった」、ということと同時に、「重要でない仕事に投下する時間が減少、またはなくなっても生産性は低下しない」、ということを意味しているからです。このことからも、優先順位の高い仕事を発見し、その処理のための時間を確保することがきわめて重要なことがわかります。 生産性向上のためにも、啄木現象を回避する意味でも、「パレートの法則」を意識し、「ムダな仕事の排除」ではなく、「重要な仕事の発見」に注意を向けることを心からおすすめします。
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16 「計画の主体性」に関するデータ 「自分らしく仕事をする」とは、主体的・積極的(受動ではなく能動的)に仕事をすることです。 スケジュール帳の中の10%の主体性を、せめて25%以上に引き上げるように努めましょう。 |
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ここで、またしても、息抜きです。 「仕事の科学研究会」の計画に関するデータを紹介しましょう。 計画を立てる際の参考にしてください。 みなさんは、「自分らしく仕事がしたい」と、思いますか? 思わないと思っている人、一度メールか電話を下さい、ご相談にのります。 多くの人は、そう願っていると私は信じますが、それを実現できている人は、そう多くはないのも事実です。 どうしてでしょう? 世の中が理不尽、不条理だからでしょうか? 私なりの答えは簡単です。 スケジュール帳の使い方が悪いからです。 「何と唐突な」と思った方、これから説明しましょう。 「自分らしく仕事をする」とは、主体的・積極的(受動ではなく能動的)に仕事をすることだと思っています。 私は、セミナー中に、スケジュール帳に記入させている仕事で、自分が主体となって取り組んだ仕事―(例えば、会議であれば自分が主催したものなど)―に色をぬってもらいます。 一ヵ月やって、その割合、そのパーセンテージが、あなたの、主体性の度合です。 下図は、それを示しています。 平均すると、10%です。 これに対し、受動的な仕事の典型は突発、割り込みの仕事ですか、これは、25%もあります。 <10対25>では、流されていると感じるのも無理ありません。 対策は一つです。 スケジュール帳の10%の主体性をせめて25%以上に引き上げる。 自分の主体的な仕事を書き込む。 そして実行する。 それだけで、少しは、自分らしい仕事に近づけることができます。
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17 仕事の「動機と生産性」の関係を知る その仕事は何のためにやるのか、なぜやるのか(動機)が、はっきりとしていれば、 どれだけ上手にやるか(質)、どれだけ多く(量)をやるのかも、自ずと見えてきます。 |
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みなさんは、計画立案とか、目標設定とか、スケジューリングとかプランニングの必要性を感じていらっしゃいますか? 中には、仕事はいつも、出たとこ勝負という人も結構いるもので、そういう人たちに、上記の質問をすると、「そんなこと考える前にやったほうがいいよ」、なんて答えが帰って来ます。または、「そんなの無駄、仕事は何が起こるかわからないから、やるだけ損」なんて返事も予想されます。 確かに、それらの意見には一理あります。 しかし、世の中ますます忙しくなって来ます。 そんなときに、ちょっとの時間でプランニングできる技術があれば、随分と仕事も変ると思うのですが・・・。 さて、それでは、プランニングの技術を磨きたい人のために、プランニングのファーストステップをお伝えしましょう。 それは、動機の把握(目的を知ること)です。 第13節で、「計画の三要素」についてお話したとおり、仕事の動機(目的)が、「質」と「量」のに要素に大きな影響を与えます。 何のためにやるのか?なぜやるのか、がはっきりしていないと、プランニングはできません。 前述の、とにかくやってみるという人に、共通している問題点も、実は、ここにあります。 何のためにやるのか、なぜやるかを考えずに、仕事を行なうことによって、的はずれ、筋違い、不要な仕事の山を築くことになりかねません。 それだけ、この動機(目的)の把握は、仕事を進め、成果を出すための生命線ということになります。 何のためにやるのか、なぜやるかがはっきりしてくれば、どれだけ上手にやるか(質)、どれだけ多く(量)をやるかのターゲットもかなり、限定することができます。 また、この「質」と「量」がはっきりしてくると、具体的に何をやった方がよいのかがわかってくるだけでなく、やり終わった段階で、自分で自分の仕事を評価することもできます。 この評価することが、生産性の向上には、不可欠の要素です。 評価するとは、上手にいったものは、さらに伸ばし、上手くいかなかったものは修正(改善)を加えることです。 仕事は、この繰り返しといえます。 計画の動機(目的)を把握して、仕事の「質」と「量」を明確にすることによって、仕事の生産性を伸ばすことができるのです(下図参照)。 ですから、リタイヤするまで、誰でも成長し続けることができると、私は信じています。
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18 目標は「思いを数字に置き換える」こと ビジネスにおいて目標はコミュニケーションの出発点です。数字に置き換えて目標設定し、 動機を示さなければ、社員の「いい仕事をしたい」という思いは実現できません。 |
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目標の設定―それは自分の思いを具体化することです。 あるいは、自分のお思いを数字に置き換えることだともいえます。 企業目標は、その企業のあらゆるビジネス現場で、コミュニケーションの成否を左右するカギとなります。 そして、有効なコミュニケーションを成立させるには、「計画の三要素」のうちの「質」と「量」の二つの要素をバランスよく包含させなければなりません。 つまり、目標は、コミュニケーションの出発点であり、コミュニケーションは、計画(目標)の三要素のうちの「質」と「量」によって大きく変化する、ということです。 「質」は、目標を策定する人の思いであり、企業目標には、それを策定する社長の思いが反映されていなければなりません。 ―会社を大きくしたい、従業員に豊かな生活を送ってもらいたいという、社長の思いを目標に表現しなければならないのです。 「量」は、その社長の思いを、社員の誰もが共通して認識できる数字など、具体的な表現に置き換えたものです。 表現すべき「質」と「量」とは、簡単にいうと、 「社員が豊かな生活ができるように、会社を大きくしたい。そのために当面の目標として、株式を店頭公開するくらいにはしたい。そこで5年計画の1年目の今期は、経営利益の二割アップを目標とする」 との文言になります。 「社員が豊かな生活ができるように会社を大きくしたい」というだけでは、具体的に何をすべきか、社員はイメージできない。 「二割の業績アップを目指せ」と言われるだけでは、なぜ目指さなければならないのか理解できず、モチベーションも確保できません。 これは、全社的な目標だけでなく、部の目標、個人の目標でも同様です。 みなさんが、「今日はいい仕事をしたい」と願うのは大切なことですが、ただ願うだけではなく、「5人以上の新規の顧客にセールスする」とか、「10軒以上の得意先を訪問する」といったように、「いい仕事」を数字に置き換えて目標としなければ、「いい仕事をしたい」という思いは実現できないのです。
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19 計画を確実に実行する最初の一歩 立派な計画や目標を立てても実行されないのは、目標そのものよりも最初の一歩に問題が多いようです。 最初の一歩はできるだけ詳細に、障害にも簡単に対応できるようにしておくことがポイントです。 |
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計画を立てたり、目標を設定したりするのは、それ自体立派な仕事ですが、いくら立派な計画を立てたり、目標を設定しても、実行しない限り何の意味もありません。 しかし、要注意なのは、計画を立てたり、目標設定するのが、好きな人ほど、その計画なりを自画自賛して、なかなか実行に移さない、移せないという傾向が強いということです。 この節では、立てた計画、設定した目標を実行するための方策について、考えてみましょう。 「計画だおれの主犯は誰だ?」の第14節を思い出してください。 主犯の一番は、着手しなかったことでした。 つまり、一番のポイントは、立てた計画なり、目標の最初の一歩(具体的な行動)は何か、ということが、決まっているかどうかです。 そこに行きつくための手順は、下図を参考にしてください。 あれやこれやの手順がありますが、要は、「最初の行動は何だ?」をはっきりさせることです。 具体的で、現実的な行動になっていない限り、着手はできません。 人間は、都合の良い動物です。 かなり高い目的意識(そんな人は、めったにいない)がないと、ついつい日和る(ひよる)動物です。 具体的な行動として、例えば「DMを発送する」というのを、最初の一歩としたとします。 しかし、そのDMを出すリストがどこにあるか、わからなかったりすると、半数近くの人は、多分、DM発送を先送りにしてしまいます。 つまり、日和るわけです。 このリストがない、というのは、仕事の障害ということです。 障害、邪魔、面倒なことがあると、「神様が、この仕事をやってはいけない」といっていると勝手に思い、その仕事の手を止める。 これは、正常な人間の、正常な反応だと私は思っています。 ですから、最初の一歩の設定は、できるだけ詳細に、障害が起きたとしても簡単に対応ができるところまで、細分化する必要があるわけです。 いかに立派な計画(目標)=夢をたてても、リアリティが欠如するのは、その目標に問題があるのではなく、最初の一歩に問題があるほうが多いというのが、私の経験則です。
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